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- 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第6話(ライクス)- 2025.04.22(火) 09:00
「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第6話
ライクス
2025.04.22(火) 09:00
「43歳から始める女一人、アメリカ留学」
第六話・・・日米「片付けられない女」対決を前に
「あのミホがルームシェア? 無理だろう。あの混乱した家を、どうやってシェアするんだ」
私はこう、噂されていた。ここアメリカに来る前の年、09年末に東京・高円寺の家でルームシェアを始めた時のこと。
私の住んでいた高円寺は、音楽や映画製作を志すようなカルチャー系の若者が集まる街だ。若者に限らず、そういった、ふらふらとした人生を歩む大人も結構いて、私の家のお隣さんは、常時3、4人の日本人、外国人のルームメイトが入れ替わり、共同生活を営んでいた。「ミホが?」の発言主は、中国系カナダ人の若者だった。まったく、大きなお世話である。
ちなみに隣といっても、我が家と隣は、外から見ると一軒の巨大な古家だった。よく見れば玄関は二つある。壁を共有して、120áuもある立派な母屋がお隣さん、そしてやや簡素な作りで後からくっつけた形の離れが、うち。うちも2階建てで、70áu近くあった。
こう書くと、立派な古民家のように思われそうだが、どちらも、居むのはそろそろ限界だろうと思われるボロさだった。 天井にはネズミが走り回り、あげくの果てには、ネコほどの大きさのハクビシンが住み着いたこともあった。
ネズミも、ハクビシンも、もしかしてウチが片付いていないから?
害獣被害にあった時には、自分のせいかと、とても心配になった。
それでも片付けようとはしなかった。そのうち、引っ越すからいいやと考えていたからだ。アメリカに行くかもしれないし、という思いもあった。けれどもより根本的には、「この家は大地震が来たら絶対に崩れる」という、確信があったからだ。早晩、引っ越さなければならない、圧死したくなければ。だからその引っ越しの時に、片付けよう。こう思っていた。
私の家の混乱ぶりの主因の1つは、本の多さにある。壁3面は天井まで、前後二列に本を並べた本棚でつぶれていた。
でも言い訳をさせてもらえば、家で仕事をしているのだ。この家は仕事場でもあった。そして私の仕事場の原風景は、大卒後、すぐに入った新聞社の記者部屋である。そこでは机の下が古新聞で一杯で、足が入れられないような人が何人もいた。それでいいんだ、とひな鳥が親鳥からすり込まれたようなものだ。私もあっという間に、書類山積記者の仲間入りをした。
他人のせいにするような言い方で、書いていて恥ずかしくなったが、やはり人間の成長に、環境要因の影響は大きいと思う。
だから会社を辞めても、仕事場といえば、そのイメージである。ただ、大きな問題はあった。
自宅を仕事場にすると、本来は生活空間である、食事をするスペースや寝る部屋までが、職場化してきてしまうのだ。ゆるやかに、本が、雑誌が、書きかけのメモが、家中に散乱するようになっていった。
「あのミホが」と揶揄される状態は、こうして少しずつ、できあがっていった。
だからこそ、私にとっては、「ルームメイト募集」は、片付けのできない女からの脱皮を強制的に行う、大プロジェクトだった。
我がルームメイトには、迷惑な話である。生活改善の実験の、道具にされて。
そして因果応報とはよくいったもの。
アメリカでは、今度は私が、逆の立場におかれていた。つまり我がルーミーは、私とのルームシェア生活を機に、「片付けられない女」からの脱出を、計ろうとしていたのだとは後から知った。
次回、またね。
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