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  • 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第8話(ライクス)- 2025.05.06(火) 09:00

「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第8話

ライクス

2025.05.06(火) 09:00

「43歳から始める女一人、アメリカ留学」
第八話・・・あまりの家の汚さ、ついにキレた

 もうイヤ−。頭がおかしくなる!

 私の家は、家中がぐちゃぐちゃになっていた。その汚れ具合は、悪いことに、日に日に高まっていった。

 毎朝、気持ちがどんよりと重くなっていった。部屋の光景を見回すと、イライラ感が全身をかけめぐった。

  なぜそんな状態になったのかというと、引っ越しの前だったのだ。25年分の東京暮らしで溜め込んだモノを、これは捨てる、これはアメリカへ送る、そして残りは日本で取っておく、と分類し、箱詰めしなければならなかった。

 私はあるチャレンジをしていた。ちょうどその前の月に、私は「片付けブーム」というテーマで、雑誌の記事を書くため取材をした。その時に、4人の片付け専門家に話を聞いた。そのうちの2人が、モノを捨てる時の方法について、同じことを言っており、それを実践してみることにした。

 「まず全てのモノを、床に並べなさい」

 つまり、本棚に本を並べたまま、捨てる本、取っておく本を選ぶのではなく、本はいったん全て本棚から出す。そして床に並べてから、選べという。服も同様。小物もだ。もちろん一度に家にあるもの全てを並べるのではない。アイテム事に、本なら本、服なら服を、この日やるぞと決めて、床に並べる。

 棚の前の方に置いた本、高いところにならべた本など、自分の中でつけた本の序列を、すべて同じ高さに並べることで、一旦、フラットにする。その上で、捨てる、取っておくの判断をすると、作業がはかどるし、悔いのない判断を下しやすいのだそうだ。

 けれどもこれは、大変な作業だった。本を床に並べると、文字通り、私は布団を敷く場所さえなくなってしまう。服だって、それなりの数はある。

 果たして、予想できた事態がやってきた。服の処理がおわらないうちに、本を並べないと、引っ越しの期日に間に合わない状態に陥った。服、本、小物、とアイテムが重なりながら、床に並んでいった。その結果、我が家はさすがの私も未体験の、恐怖のガラクタ屋敷になった。

 ガラクタ屋敷生活が3日目くらいになると、かなり気分が悪くなった。そして5日目の朝、発狂するかと思った。

 「人間は、場の影響を受けるのです。だからこそ、暮らしの場は整えておかないといけない」
 こんな言葉が脳裏をかけめぐった。

 取材でこう話してくれたのは、今をときめく片付け研究家で、「断・捨・離」という概念を片付けに取り入れた本が大ヒットした、やましたひでこさんだった。

 余談だが、やましたさんは外出着は3セットしか持たないようにしているという。気に入ったものを、シーズン前に3セット買い、その年の春はその3セットを着続ける。そしてシーズンが終われば、捨てる。それは20年を越える片付け研究の末にたどりついた、やましたさんの暮らしの方法で、なかなかまねできることではない。

 「場の影響を受ける」という話が出た時には、 そりゃそうだろうなあ、と漠然とその言葉を受け止めていた。
 あわや発狂するかと思う事態になり、ようやく、あれは真実だったのだと悟った。

 早くここから脱出しないと、本当に、おかしくなってしまう。

 友達の手を借りて、25年分の荷物を整理・分類しおえた時には、深い脱力感と爽快感に襲われた。片付けでこれほどの達成感が得られると知ったのは、初めてだった。

次回、またね。

フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]

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