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- 「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第4話(ライクス)- 2025.04.01(火) 09:00
「43歳から始める女一人、アメリカ留学」第4話
ライクス
2025.04.01(火) 09:00
「43歳から始める女一人、アメリカ留学」
第4話・・・大型犬との勝負に勝って
昼寝から目を覚ますと、ボクサー犬が家にいた。日中は、「ハッピードッグ」という、犬のデイケアサービスに預けていたから、とルーミーがいう。
でかい。体重は100ポンド、およそ45㎏だというから、私とそんなに変わらない。バウバウ、息づかいも荒く寄ってきて、くんくんと嗅ぎ回る。それに、変な話だが、やたらと股のあたりに鼻を寄せてくる。ミコ、オスだから?
5分か10分か、ミコによる私の全身、ならぬ下半身検査が続いた。
「玄関から入ってくるんじゃなくて、部屋から出てきたでしょ。 『どこから来たんだ?』って不思議に思っているの」
ルーミーは言う。そりゃそうだ。
ミコとの体面は、私にとっては、密かに設定した一つの関門だった。
犬は、序列の動物だという。ミコにとって、これまでは一位ルーミー、二位ミコ、以下、インコやニワトリたち、だったはず。そこにちん入者がやってきた。
私の序列がどうなるか、それは私のこれからの、この家での生活に影響するはず。アメリカでの生活は、きっと、英語に苦労して、辛いことも多いだろう。だからこそ、家に帰ってまで、犬になめられて暮らすのはいやだ。
目があったら、自分からそらしてはいけない。
日本の友人に、こう聞いた。真偽は不明だが、関西弁でいう「メンチ切った」、やわらかに言えば、にらめっこの論理か。先に目をそらした方が負け。
ミコをにらみつけた。ミコも、じっと私の目を見つめている。30秒か、1分経ったか。
にらみ合いは、ミコが向こうを向いて、終わった。メンチ切りの効果があったのかどうかは分からないが、その日の夜には、ミコはもう私を臭わなくなった。
よく見ると、この家がちらかっているのは、ミコによる影響も大きいと分かった。古道具かと思った大きな布団のような固まりは、ミコの昼寝、かつ遊びのためのマットレスだった。その傍には、ミコのためのおもちゃ、ぬいぐるみを一杯に詰め込んだカゴがある。
メインのソファーの座部には、ミコのために、布が敷いてある。でもミコがソファーに座ると、布はよれるし外れる。
ミコは実によくしつけられていて、「座れ」「立て」「寝転べ」「腹を出せ」などなど、様々な号令を、一つ一つ聞き分けて、きちんと反応する。
けれどぬいぐるみを出したらしまう、というところまでは、できない。
ミコが家で動けば、遊べば、そこが散らかっていく。そしてルーミーは、それを片付けようとしない。
なるほどね、ちょっとだけ分かった。この家が、片付いていない理由が。
でもそれだけでは説明できないくらい、散らかっているのはなぜだろう。
とりあえず、初日はここまで。寝ることにした。
次回、またね。
フリーライター
長田美穂さん(ながた みほ、1967年 - 2015年10月19日 )
1967年奈良県生まれ。東京外国語大学中国語学科を卒業後、新聞記者を経て99年よりフリーに。
『ヒット力』(日経BP社、2002年)のちに文庫 『売れる理由』(小学館文庫、2004年)
『問題少女』(PHP研究所、2006年)
『ガサコ伝説 ――「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社、2010年)共著[編集]
『アグネス・ラムのいた時代』(長友健二との共著、中央公論新社、2007年)翻訳[編集]
ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社、2014年)脚注[編集]
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